AI実験室 2026.10.06 — 15 min read

ChatGPT-Userを名乗る偽クローラーをログで発見した|本物との見分け方

ChatGPT-Userを名乗る偽クローラーをログで発見した記事のサムネイル
OBS-LOG / 2026.10.06
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サーバーログに ChatGPT-User という文字列が出てくると、「ChatGPTが自分のサイトを読みに来たのかも」と思いたくなります。

ふとログを追っていくと少し変なアクセスがありました。

ChatGPT-User を名乗っているのに、同じIPアドレスで10種類以上の別のクローラー名も名乗り分けていたのです。

User-Agent(UA)の名前だけでは、本物のAIクローラーかどうかは判断できません。

この記事では、AI観測ラボのサーバーログをもとに、偽クローラーを見分けるときに確認したいポイントを、一般のWordPress運営者向けに整理します。

この記事でわかること|📖:約7分

  • 1つのIPが13種類のAI・検索クローラー名を名乗り分けていた実測ログ
  • 正規の形式と不審なアクセスで見つかったUA文字列の違い
  • 公式のIP一覧やDNS情報を使って、送り元を確認する方法
  • 一般のWordPress運営者がログを見るときの注意点

サーバーログに ChatGPT-User が来ていた

サーバーログにChatGPT-Userが記録された様子
AI観測ラボのサーバーログに記録されたChatGPT-Userのアクセス

AI観測ラボでは、サーバーログを定期的に確認しています。ある日のログを見ていると、ChatGPT-User という名前のアクセスが何度も記録されていることに気づきました。

ChatGPT-User は、ChatGPTやCustom GPTでユーザーの操作に応じてウェブページを取得するときなどにOpenAIが使うUser-Agentです。自動的にウェブ全体を巡回するGPTBotとは役割が異なります。詳しい違いについてはChatGPT のクローラーまとめも参考にしてください。

ログに出てくると「ChatGPT経由で自分のページが参照されたのかも」と思いたくなります。

ですが、件数や送り元のIPアドレスを確認していくと、少し様子がおかしいことに気づきました。

同じIPが、13種類のクローラーを名乗り分けていた

ChatGPT-User のアクセスを絞り込み、IPアドレスごとに件数を確認してみました。

すると、38.43.93.159 という1つのIPアドレスが、ChatGPT-User だけでなく、ほかのクローラー名も大量に名乗っていることがわかりました。

実際のログから集計した結果がこちらです。

件数 名乗ったクローラー名
47 bingbot
46 Google-CloudVertexBot
36 OAI-SearchBot
35 Applebot
33 PerplexityBot
31 GoogleOther
30 GPTBot
30 Amazonbot
28 DuckDuckBot
27 CCBot
26 Baiduspider
23 ChatGPT-User
20 YandexBot

1つのIPアドレスが、OpenAI、Google、Microsoft、Apple、Perplexityなど複数社のクローラー名を13種類、名乗り分けていました。

1つの会社が複数種類のクローラーを運用することはあります。しかし、同じIPアドレスから別々の会社のクローラー名を次々と名乗るのは、通常の正規クローラーの動きとは考えにくいものです。GPTBotやOAI-SearchBotなど、OpenAI系クローラーの挙動についてはGPTBot の実測ログで詳しく紹介しています。

さらに逆引きをすると、38.43.93.159 からは 38.43.93.159.hostodo.com というホスト名が返ってきました。OpenAIやGoogleなどの名前ではなく、ホスティング事業者のドメインです。

また、逆引きの結果だけで本物か偽物かを決めることはできません。OpenAIやAnthropicはクローラーの送り元を確認するためのIPアドレス一覧を公開しており、GoogleはDNSを使った確認方法も案内しています。会社によって確かめ方が異なります。

IPアドレスと公式情報で送り元を確認する

User-Agentの名前は、アクセスする側が自由に書き換えることができます。そのため、本物かどうかを確認するときは、送り元のIPアドレスや各社が公開している公式情報も合わせて見ます。

OpenAI:公式のIPアドレス一覧と照合する

OpenAIは、GPTBot、OAI-SearchBot、ChatGPT-Userが使うIPアドレスの一覧を公式に公開しています。

  • GPTBot:https://openai.com/gptbot.json
  • OAI-SearchBot:https://openai.com/searchbot.json
  • ChatGPT-User:https://openai.com/chatgpt-user.json

OpenAI系の名前を名乗るアクセスは、送り元のIPアドレスが、名乗った名前に対応する公式一覧に入っているかを確認できます。

公式のIP範囲は将来変更される可能性があります。過去のアクセスを継続して調査する場合は、アクセスログだけでなく、アクセス当時の公式IP一覧も保存しておくと、あとから照合しやすくなります。

Google:公式IP一覧、または逆引きと正引きで確認する

Googleは、Googlebotなどが使用するIPアドレスの一覧を公開しています。また、DNSを使った確認方法も公式に案内しています。

DNSで確認する場合は、まず送り元のIPアドレスを逆引きし、Googleが案内しているドメインかを確認します。

ただし、逆引きだけでは終わりません。返ってきたホスト名をもう一度「正引き」し、最初のIPアドレスに戻ることまで確認します。

host 調べたいIPアドレス
host 逆引きで返ってきたホスト名

逆引きと正引きの両方を確認することで、ドメイン名だけを使った偽装を見分けやすくなります。

Anthropic:公式のIPアドレス一覧と照合する

ClaudeBotなどを運用するAnthropicも、クローラーが使うIPアドレスの一覧を公式に公開しています。

  • ClaudeBotなど:https://claude.com/crawling/bots.json

ClaudeBotやClaude-UserなどAnthropicの名前を名乗るアクセスは、送り元のIPアドレスが公式一覧に入っているかを確認できます。

注意したいのは、サーバー会社の名前だけでは判定できないことです。AI観測ラボのログでは、Anthropicの公式IP範囲と一致するClaude-UserがGoogle Cloudのサーバーから来ているケースも確認しています。

「Google CloudだからGoogleのアクセス」「ホスティング会社のIPだから偽物」といった判断ではなく、名乗った会社が公開しているIP範囲と照らし合わせることが重要です。

今回のIPはどうだった?

38.43.93.159を逆引きした結果hostodo.comと表示された様子
逆引き確認ではhostodo.comのホスト名が返ってきた

38.43.93.159 を逆引きすると、次のホスト名が返ってきました。

38.43.93.159.hostodo.com

hostodo.com はホスティング事業者のドメインです。

ホスティング事業者のIPアドレスを使っていることだけで、攻撃や偽装と決めることはできません。正規のAIサービスでも、外部のクラウド基盤を利用することがあるためです。

一方、38.43.93.159 はChatGPT-Userだけでなく、Google、Microsoft、Apple、Perplexityなど13種類の別会社のクローラー名を使い分けていました。

送り元とUser-Agentの使い分けを合わせて見ると、OpenAIの正規アクセスではなく、複数のクローラー名を使った別のスキャナーである可能性が高いと考えられます。

ChatGPT-UserのUA文字列にも違いがあった

ログを詳しく見ると、ChatGPT-User のUser-Agent文字列にも違いがありました。OpenAIが現在公式に掲載している形式と一致するアクセスと、38.43.93.159 から来た不審なアクセスでは、括弧の位置が少し違っています。

種別 UA文字列 件数
公式掲載の形式と一致 Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko); compatible; ChatGPT-User/1.0; +https://openai.com/bot 656件
38.43.93.159からの不審なアクセス Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ChatGPT-User/1.0; +https://openai.com/bot) 23件

違いは括弧の位置です。

  • 公式掲載の形式と一致:Gecko) で一度括弧を閉じてから compatible; が続く
  • 不審なアクセス:Gecko; のあとに compatible; が入り、最後にまとめて括弧が閉じる

ぱっと見では、ほとんど同じに見えます。

ChatGPT-Userの公式掲載形式と不審なアクセスのUA文字列の違いを比較した図
括弧の位置だけが違う——ChatGPT-UserのUA文字列比較

公式掲載の形式と一致したアクセスは、今回確認したログではMicrosoft Azure系のIP帯から来ていました。一方、残りの23件は、前述の 38.43.93.159 から来ています。

ですが、括弧の位置だけで本物か偽物かを見分けられるわけではありません。

User-Agentはアクセスする側が自由に書けるため、正規の文字列を1文字も違わずコピーすることもできます。実際に海外のセキュリティ会社GreyNoiseは2026年8月、Anthropicの正規ClaudeBotと1文字単位で同じUser-Agent文字列を使った偽装を報告しています。

UA文字列の違いは手がかりの1つにはなりますが、決め手ではありません。送り元のIPアドレス、各社の公式情報、同じIPが名乗っているほかのUser-Agent、何を読みに来ているのかを合わせて確認する必要があります。

一般のWordPress運営者はどう見ればいいか

ログに ChatGPT-User や GPTBot といった名前が出てきても、名前だけを見て本物と判断するのは早いです。だからといって、必要以上に怖がる必要もありません。

38.43.93.159 からのアクセスは、少なくとも今回確認したログでは、WordPressの管理画面への侵入やサイトの改ざんは確認できませんでした。複数のクローラー名を使いながら、サイト内のURLを巡回していたアクセスとして記録されています。

ログを見るときは、1つの情報だけで判断せず、次のようなポイントを組み合わせて見ます。

確認項目 正規アクセスを確認する手がかり 確認したい動き
送り元のIP OpenAI・Anthropicなどは公式IP一覧と一致。Googleは公式IP一覧やDNSで確認できる 公式情報と一致せず、さらに不審な挙動がある
同じIPのUA 同じサービスに関係するUser-Agentでアクセスしている 短時間に複数社のクローラー名を次々と使い分けている
アクセス先 記事ページ、トップページ、sitemap.xml、robots.txtなど 存在しない管理系URLや設定ファイルなどを大量に探している
アクセス量 ページを順番に取得している 同じIPから短時間に大量の存在しないURLを試している

Googlebotを名乗るアクセスのDNSを確認する場合は、SSHなどから host コマンドを使えます。

host 調べたいIPアドレス

Googleが案内しているドメインが返ってきた場合は、さらにホスト名を正引きします。

host 逆引きで返ってきたホスト名

正引きの結果が最初のIPアドレスに戻ることまで確認します

OpenAIのGPTBot、OAI-SearchBot、ChatGPT-Userや、AnthropicのClaudeBotなどは、各社が公開する公式IP一覧との照合も使えます。

会社によって、公式IP一覧を使うか、DNSで確かめるかなど、案内している確認方法は異なります。「ホスティング会社のIPだから偽物」「逆引きができないから偽物」といった1つの条件だけで決めないことが大切です。

User-Agentの名前だけを信じてアクセス解析をしていると、偽装アクセスを本物のAIクローラーとして数えてしまうことがあります。UA名、送り元、公式情報、アクセス挙動をセットで見ると、ログの見え方が変わります。

自分のサイトのAIクローラーを確認したい方へ

AI観測ラボでは、WordPressサイトへのAIクローラーのアクセスを記録・可視化できる無料プラグイン「AI Kansoku Lab Tracker」を公開しています。

サーバーログを直接確認しなくても、WordPressの管理画面からAIクローラーのアクセス状況を確認できます。

AI Kansoku Lab Tracker を見る(WordPress.org)

まとめ:AIクローラー名だけでは本物か判断できない

今回のログでは、ChatGPT-User を名乗るアクセスの中に、同じIPアドレスで13種類のクローラー名を使い分けているものを確認しました。

38.43.93.159 の逆引きでは hostodo.com のホスト名が返り、さらに同じIPアドレスからOpenAI、Google、Microsoft、Apple、Perplexityなど複数社の名前を使っていました。これらの挙動から、正規のOpenAIアクセスではなく、複数のクローラー名を使った別のスキャナーである可能性が高いと考えています。

また、OpenAIが公式に掲載している ChatGPT-User の形式と、今回の不審なアクセスでは、UA文字列の括弧の位置にも違いがありました。注意点として、User-Agentは自由にコピーできるため、文字列だけで本物か偽物かを判断することはできません。

OpenAIやAnthropicのクローラーは公式IP一覧、Googlebotは公式IP一覧や逆引き・正引きなど、利用できる公式情報と照らし合わせながら、同じIPが何を名乗り、何をしに来ているのかも合わせて確認することが大切です。

AI観測ラボでは引き続きサーバーログをもとに、AIクローラーの実際の動きを観測していきます。ClaudeBotの挙動についてはClaudeBot ログ解析、meta-externalagentについてはmeta-externalagent 観測記録もあわせてどうぞ。

2026年10月には、30種類以上のクローラー名を使い分けながら、パスワードやクラウド、AIサービスの鍵を探す攻撃も観測しました。会社のサイトを守る方法は、偽AIクローラーへの4つの対策で紹介しています。

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