GA4に出ない流入がある—ゼロクリック時代の計測の死角
GA4のトラフィック獲得レポートを開いたとき、「Direct」という項目が気になったことはありませんか。
Directとは本来、URLを直接入力したユーザーやブックマークからの流入を指します。しかし今、このDirectの中に「AIに紹介されてサイトにたどり着いたユーザー」が大量に混入している可能性があります。
ChatGPTやPerplexityで検索したユーザーがサイトのリンクをクリックしても、GA4には正しく記録されないケースがあります。Google AI OverviewやAI Modeからの流入も、通常の検索流入と区別できません。
つまりGA4の数字は、AI検索が普及した今、「見えていない流入」を前提に読む必要がある時代になっています。
この記事でわかること|📖:約7分
- GA4のDirectに「AI経由流入」が混入する仕組みと理由
- Google AI ModeがSearch Consoleで計測できない現状
- 業種別3サイトの実データで見るDirect比率の異常値
- 現状できるAI流入の推定方法と代替指標の考え方
GA4のDirectに「AI流入」が混入する仕組み
GA4がトラフィックの流入元を判定するとき、ブラウザが送信する「リファラー(referrer)」という情報を使っています。リファラーとは「どのページからリンクをクリックしてきたか」を記録した情報です。
たとえばGoogleの検索結果からリンクをクリックすると、ブラウザは「google.comから来た」というリファラーをGA4に送信します。GA4はその情報をもとに「Organic Search」と分類します。
ところがリンクに「noreferrer」という属性が付いている場合、ブラウザはリファラーを送信しません。GA4は「どこから来たかわからない」と判断して、Directに分類します。

リファラーがある場合とない場合の違い
| 流入元 | リファラー | GA4の分類 |
|---|---|---|
| Google検索結果 | google.com | Organic Search |
| ChatGPT(ブラウザ) | chatgpt.com | Referral(計測できる) |
| ChatGPT(アプリ) | なし(WebView) | Direct(混入) |
| Google AI Mode | noreferrer付き | Direct(混入) |
| Google AI Overview | google.com(区別不可) | Organic Search(混入) |
| Perplexity(ブラウザ) | perplexity.ai | Referral(計測できる) |
※ Google AI Modeのnoreferrerバグは2025年5月に修正済み。ただしGSCでの別集計は未対応。
特に問題なのは2つのパターンです。
1つ目はChatGPTのスマートフォンアプリからの流入です。アプリ内のWebView(アプリ内ブラウザ)はリファラーを送信しない仕様のため、ChatGPTで紹介されたサイトにアプリからアクセスしてもGA4にはDirectと記録されます。ChatGPTの利用はスマートフォンが中心であることを考えると、この影響は小さくありません。
2つ目はGoogle AI Overviewからの流入です。AI Overviewは通常のGoogle検索結果と同じドメイン上に表示されるため、GA4では通常のOrganic Searchと区別できません。AI Overviewに引用されてクリックされた流入も、普通の検索クリックと同じ「google / organic」として記録されます。
つまりGA4のレポートには、AIに起点を持つ流入が少なくとも2つのチャネルに分散して混入していることになります。
参照:Ahrefs「Google Made It So You Can’t Track Clicks From AI Mode」(2025年5月)
Search Consoleも「AI流入」を正確に見せてくれない
GA4で計測できないなら、Search Consoleで確認すればいいのでは——そう思うかもしれません。しかし残念ながら、Search ConsoleもAI流入の全体像を把握するには不十分な状態です。
現時点でSearch Consoleが抱える問題は2つあります。
① AI OverviewのクリックはOrganicに混在する
Search Consoleの検索パフォーマンスレポートでは、AI Overviewからのクリックと通常の検索結果からのクリックが同じ「ウェブ」検索タイプにまとめて表示されます。
つまり「表示回数が増えているのにCTRが下がっている」という現象が起きても、それがAI Overviewの影響なのか、検索順位が下がったせいなのか、Search Consoleだけでは判断できません。
② AI ModeはSearch Consoleで別集計されていない
Googleが2025年に導入したAI Modeは、Search Consoleでの別集計がまだ対応していません。
Googleは「近日対応予定」としていますが、2026年3月時点ではAI Modeからのクリックデータは通常の検索トラフィックに混在したまま、または計測できない状態が続いています。
参照:Search Engine Land「Google AI Mode traffic is untrackable」
Search ConsoleとGA4でAI流入が見えない理由
| AI機能 | GA4での表示 | 判別できるか |
|---|---|---|
| AI Overview | Organic Searchに混在 | ❌ できない |
| AI Mode | Directに混在(別集計未対応) | ❌ できない |
| ChatGPT(ブラウザ) | Referral(chatgpt.com) | ✅ 一部確認可能 |
| ChatGPT(アプリ) | Directに混在 | ❌ できない |
| Perplexity(ブラウザ) | Referral(perplexity.ai) | ✅ 一部確認可能 |
| Gemini・Copilot等(ブラウザ) | Referral(各ドメイン) | ✅ 一部確認可能 |
※ アプリ経由・AI Overview・AI Modeはいずれも正確な計測が困難な状態が続いている(2026年3月時点)
SEOの世界では以前、GoogleがSSL化を進めたことでキーワードデータが見えなくなった「Not Provided問題」がありました。AI検索時代に起きているこの計測の空白は、業界では「Not Provided 2.0」と呼ばれ始めています。
検索流入の計測手段として長年使われてきたGA4とSearch Consoleの組み合わせが、AI検索の普及によって「見えない部分」を抱えるようになった——これがゼロクリック時代の計測の死角の本質です。
参照:Search Engine Land・Lily Ray「Not Provided 2.0」(2025年)
実データで見る——業種別3サイトのDirect比率
「AI流入がDirectに混入している」という話は、実際のデータでも確認できます。
業種の異なる3サイトのGA4データを確認したところ、いずれも業種標準と比べてDirect比率が高い傾向が見られました。
業種別3サイトのDirect比率(実データ・匿名)
| サイト種別 | 計測期間 | Direct比率 | 業種標準との比較 |
|---|---|---|---|
| 建築系メーカーサイト(BtoB) | 2026年2月〜3月 | 33.07% | 標準15〜20%に対して約13〜18%高い |
| 不動産リノベ企業サイト | 2024年1月〜2026年3月 | 23.32% | 標準より高め |
| インテリア系ECサイト | 2026年2月〜3月 | 17.94% | EC標準10〜15%に対して約3〜8%高い |
※ いずれも許可を得た上で匿名で掲載。AI観測ラボによる独自調査(2026年3月)
3サイトに共通しているのは、業種が違うにもかかわらず全サイトでDirectが標準より高いという事実です。
もちろんDirect比率が高い理由はAI流入だけではありません。ブックマークからのリピーター、メールマガジンのリンク、UTMパラメータ未設定の広告流入なども原因になります。
ただし注目したいのは「なぜ業種を問わず高いのか」という点です。業種ごとにリピーター比率やメール施策の有無は異なります。それでも全サイトで標準を上回っているとすれば、業種横断で共通する要因——つまりAI検索の普及——が影響している可能性を否定できません。
⚠️ 観測ラボからの注記
今回のデータはサンプル数が限られており、AI流入が原因であると断定するものではありません。ただし「計測できない流入がDirectに混入している可能性がある」という仮説を検討する根拠として提示しています。

現状できるAI流入の推定方法3つ
GA4もSearch ConsoleもAI流入を完全には計測できません。ただし「まったくわからない」わけでもありません。現状使える推定方法が3つあります。
① GA4のReferralでAI検索サービスを確認する
ChatGPT・Perplexity・GeminiなどのAI検索サービスはブラウザ経由であれば、GA4のReferralに参照元ドメインとして記録されます。完全な計測ではありませんが、「どのAIサービスから流入があるか」の傾向を把握できます。
確認手順はこうです。GA4の「レポート → 集客 → トラフィック獲得」を開き、ディメンションを「セッションの参照元/メディア」に切り替えます。以下のドメインが表示されていればAI検索からの流入が発生しています。
GA4で確認できる主なAI検索サービスのドメイン
| AIサービス | GA4に表示される参照元 |
|---|---|
| ChatGPT | chatgpt.com |
| Perplexity | perplexity.ai |
| Gemini | gemini.google.com |
| Copilot | copilot.microsoft.com |
| Claude | claude.ai |
※ アプリ経由の流入はこの方法では確認できない
② GA4にカスタムチャネルグループを追加する
GA4の管理画面でAI検索専用のチャネルグループを作成すると、ReferralとしてバラバラになっているAI流入をまとめて確認できます。
設定場所は「管理 → データの表示 → チャネルグループ」です。新しいチャネルを作成して、以下の正規表現をセッションの参照元に設定します。
(chatgpt\.com|chat\.openai\.com|perplexity\.ai|gemini\.google\.com|copilot\.microsoft\.com|claude\.ai)設定後はトラフィック獲得レポートに「AI検索」というチャネルが表示されるようになります。ただしこれはブラウザ経由の流入のみが対象で、アプリ経由やAI Overview・AI Mode経由の流入は含まれません。
③ ランディングページの「#:~:text=」パラメータを確認する
AI OverviewやPerplexityからクリックされたURLには、「#:~:text=」というパラメータが付くことがあります。これはページ内の特定テキストをハイライトするブラウザ機能で、AIが引用箇所を指定するときに使われます。
GA4の「エンゲージメント → ランディングページ」レポートで検索欄に「#:~:text=」と入力して確認してみてください。このパラメータ付きのURLが記録されていれば、AI経由でクリックされた可能性が高いです。
💡 3つの方法で見えるもの・見えないもの
①はどのAIサービスから来ているかの傾向把握、②はAI流入をまとめて可視化、③はAI Overviewからの流入を推定——3つを組み合わせることで、見えない部分を少しずつ補完できます。ただしいずれも推定であり、完全な計測ではありません。
じゃあ何を指標にすればいいのか
GA4もSearch ConsoleもAI流入を完全には把握できない——では何を見ればいいのでしょうか。
答えは「PV・セッション数だけを指標にするのをやめる」ことです。AI検索が普及した今、流入数だけを追いかけても実態が見えにくくなっています。
代わりに注目したい指標が3つあります。
① エンゲージメント率と平均エンゲージメント時間
GA4のエンゲージメント率は「サイトに来たユーザーがどれだけ能動的に行動したか」を示します。AI検索経由のユーザーは情報収集をある程度終えてからサイトに来る傾向があるため、エンゲージメント率が高くなりやすいです。
流入数が減っていてもエンゲージメント率が上がっているなら、質の高いユーザーが来ている可能性があります。セッション数の減少だけを見て「失敗」と判断するのは早計です。
② Search ConsoleのCTRと表示回数の乖離
Search Consoleで「表示回数は増えているのにCTRが下がっている」キーワードがあれば、AI Overviewに表示されてクリックを奪われている可能性があります。
確認方法はSearch Consoleの「検索パフォーマンス」で表示回数を降順に並び替え、CTRが1〜3%以下のキーワードを探すことです。そのキーワードをGoogleで実際に検索してAI Overviewが表示されるか確認すると、影響の有無を推測できます。
③ ブランド指名検索数の推移
AI検索でサイト名・会社名・ブランド名を知ったユーザーが、後から指名検索でたどり着くケースが増えています。Search Consoleでブランド名のキーワードのクリック数推移を定期的に確認してください。
流入の入口がAIに移っても、ブランド指名検索が増えていれば認知は着実に広がっています。これはAI検索時代における「見えない資産の蓄積」を示す指標になります。
AI検索時代に見るべき指標まとめ
| 指標 | 確認場所 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| エンゲージメント率 | GA4 | 流入の質が上がっているか |
| 表示回数とCTRの乖離 | Search Console | AI Overviewの影響を推測 |
| ブランド指名検索数 | Search Console | AI経由の認知拡大を推測 |
| AI検索Referral数 | GA4(カスタムチャネル) | 確認できるAI流入の傾向 |
| #:~:text=付きURL数 | GA4ランディングページ | AI Overview経由を推定 |
完璧な計測は現時点では存在しません。ただし複数の指標を組み合わせて「推測の精度を上げる」ことはできます。セッション数だけを見て一喜一憂するより、これらの指標を定期的にモニタリングする習慣の方が、AI検索時代には実態に近い判断ができます。

まとめ
GA4に出ない流入がある——この記事で扱った内容を整理します。
この記事のまとめ
GA4のDirectには、ChatGPTアプリやGoogle AI Modeからの流入が混入している可能性がある
Google AI OverviewからのクリックはOrganic Searchに混在し、Search ConsoleでもAI Modeの別集計は未対応(2026年3月時点)
業種の異なる3サイトのGA4実データで、いずれも業種標準を上回るDirect比率が確認された
ChatGPT・Perplexityなど独立AIサービスはブラウザ経由であればReferralとして一部確認できる
完全な計測は現時点では不可能だが、複数の指標を組み合わせることで推測の精度を上げられる
「セッションが減った」「CTRが下がった」という数字だけを見て対策を間違えないために、GA4とSearch Consoleの限界を理解した上でデータを読む視点が今後ますます重要になります。
ゼロクリック問題の全体像については「検索1位なのにアクセスが少ない理由|ゼロクリック問題をわかりやすく解説」で解説しています。次の記事では、ゼロクリック問題がGoogle広告のCTRにどう波及するかを扱います。
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